お世話になります。
2022年2月4日(金)朝日新聞、毎日新聞、日本将棋連盟で組織する実行委員会で開催されている将棋の第80期名人戦のA級8回戦は歴史的な一日でした。本体局は棋界のみならず、将棋ファンからも非常に注目された対局でした。永年棋界を牽引し、当時のタイトルの全てで永世タイトル(7冠)を獲得し、棋界初の国民栄誉賞を受賞された羽生善治 九段(51歳)が29年間A級に在籍してましたが、本対局の結果次第で、下位クラスへ降格するかどうかがきまる対局であったからです。わたしも非常に注目し、夜はYOUTUBEのLIVE配信にくぎ付けでした。
4日の午前10:00~東京都渋谷区の将棋会館で始まった残留をかけた本対局の結果は、対戦相手の永瀬拓矢王座(29歳)が勝利し、羽生九段のB級1組クラスへの陥落が決定しました。
対局前から永瀬王座との対局成績が4勝11敗と良くないことと、直近の4対局(2020年11月、21年2月、4月、10月)で負けていること、最後に勝ったのが2019年6月4日の王将戦での予選であるぐらい、相性が悪い対局相手のため、今年の羽生九段の対局内容から勝利が厳しい見方が大勢を占めていました。
一方、将棋ファンは羽生九段を応援し、将棋と言ったら羽生九段しかご存じない方々もいらっしゃると思いますが、そのような方々も羽生九段を応援するコメントをよく拝見しておりました。更に、羽生九段にどちらかといったら年の近い中年のわたくしなどは、尚更羽生九段を応援してまして、同じような気持ちのコメントなども多くみられ、注目の度合いを感じておりました。
将棋のプロ棋士の方々にはランクがありまして、毎年同ランクの棋士とリーグ戦(順位戦)を一年かけて実施し、そのクラスの上位者は上のランクへ、下位者は下のクラスへの入れ替えがあります。
上位から、A級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組とあります。そして、A級の順位戦の結果、上位1名が毎年、名人へ挑戦ができることになっています。名人戦に挑戦するためには、A級に在籍するのが最低限の必須要件なのです。サッカーでいうところのAクラスがJ1クラス、B1クラスがJ2といったイメージです。つまり、A級だからと言って、常にA級に入れるわけではないため。本当に実力主義の世界ですよね。
名人 第79期名人 渡辺明 3冠(名人・棋王・王将)
173名(日本将棋連盟のHPから数えた。また、名人戦に参加されないフリークラスの棋士も含む数字です)
A級 10名
B級1組 13名
B級2組 25名
C級1組 35名
C級2組 53名
合計136名
羽生九段は、29期連続でA級に在籍してました。つまり、実力の上で最高クラスに在籍し続けてきたということです。その羽生9段が今回順位戦で敗北を期し、来期はB級1組への降格します。一方、順位戦B級1組の藤井聡4冠は首位を独走しており、おそらく、順調にいけば、来期をA級で戦う形になると思われます。
羽生九段がA級⇒B級1組へ、
藤井4冠はB級1組⇒A級へ。
来期は、順位戦で交わることはなさそうですが、棋界の勢力図の転換点を感じる対局であったような気がいたします。
しかし、わたくしが注目しておりますのは、羽生九段のこれからなんです。最近は藤井聡4冠が注目されておりますが、それまでは、将棋と言ったら羽生九段というぐらい、棋界の顔だと思います。いや、今もそれ変わりないと思いますし、今後もそうでしょう。それぐらい、将棋界への功績や影響がおおきいものと思われます。将棋ファンも同じようです。かつての名人を獲得された方々や複数タイトルを獲得された、また獲得回数も歴代上記に列席される先生方は、A級から降格したら、引退や、フリークラス(順位戦に参加しない)になるということを選択することもあったそうです。
それぐらい、A級に在籍するということは実力の証明であり、棋士にとって誇りあるようです。ましてや、タイトル獲得回数99回を誇る羽生九段にとりましても、大きな意味合いがあるのではないかと周りは勝手に考え、今後どのようにされるかを非常に興味深く見守っているということです。
最近であれば、羽生九段のライバルのおひとりである、森内九段(18世名人)はA級から陥落した後に、B級での対戦を望まず、フリークラスになりました。無口なイメージの森内九段はいまや、YOUTUBEも開設されていて、将棋ファンを驚かせております。羽生九段の前の将棋界をリードされていた谷川九段(17世名人)はそのまま順位戦を戦いまして、今はB級2組で戦っておられます。一時期は日本将棋連盟の会長もされ、対局と連盟の運営をされておりました。
頂点を極めたものが、一旦その頂から退いたあとの人生をどのようにされるのかを注目してます。今の名人の渡辺明3冠は、今名人位ですが、その前は実はB級1組でした。A級に永年在籍してましたが、76期の順位戦で、A級からB級1組へ陥落し、77期をB級1組で戦い、全勝し、再びA級に復帰されました。迎えた78期A級の順位戦で全勝し、当時の豊島将之名人への挑戦権を獲得し、4勝2敗で名人を初めて獲得しました。それまで、いろいろなタイトルは獲得しておりましたが、名人位は初戴冠でした。B級陥落後からの頂点へ上り詰めたことは本当に凄いことだと思いました。順位戦は1年間を通して戦うリーグ戦です。どれだけの準備をされ、精神力をどのように保ったのかなど、非常に興味深いです。しかしながら、渡辺3冠は30代、羽生九段は50代ということで、頭と体力と精神力が必要な対局に年齢は大きな影響があると思われます。それなので、尚更、今後の羽生九段の戦い方、対局への取り組み方、棋界での立ち居振る舞いなど、その生き方を非常に気になるのです。
昔の大棋士である、大山康晴15世名人は、69歳で亡くなるまで現役でA級に在籍し、しかもA級に44期連続で在籍していたとのことで、その記録に驚かされます。
そして、羽生九段にも勝手に期待している自分がおります。
A級返り咲きと名人位復帰を期待してしまうのです。しかし、同時に、どのような選択をされても羽生九段を応援していきたいと思っております。
アラフォーの自分と勝手に重ね合わせ、いつかは自分も頭も体も精神力も衰えます(今の進行中といううわさも?)。その時に、自分はどのように選択し、仕事をし、人生を歩んでいくのだろうと考えることもあります。だからこそ、羽生九段の選択に興味があるのだと思います。もちろん、羽生九段のような仕事での大きな実力と功績はないわけですが、一つの道しるべとして見ているのでしょう。おそらく、そのようなファンの方も多いのではないでしょうか。
現在も羽生九段は、タイトル獲得回数99期という歴代最高の成績です。ダントツです。
1位 99期 羽生善治(九段)
2位 80期 大山康晴(故人)
3位 64期 中原誠(現役引退)
4位 29期 渡辺明(名人、棋王・王将)
5位 27期 谷川浩司(B級2組)
6位 19期 米長邦雄(故人)
7位 13期 佐藤康光(将棋連盟 会長 A級)
8位 12期 森内俊之(フリークラス 9段)
9位 8期 加藤一二三(現役引退)
9位 8期 木村義雄(故人)
10位 8期 升田幸三(故人)
名人位復帰でタイトル100期を飾っていることに勝手に思いをはせながら、今後の羽生九段の人生を楽しみにしている今日この頃です。